医学教育について思うこと


医学部での教育は、まず基礎医学と臨床医学に分かれています。
大枠はそれでいいのですが、現在の科目分けは合理的でないと感じています。

自分は何を学習しているのか? 何のためにそれを学習しているのか?
など実際は理解した後や、実践の中でしか分からないものですが、なるべく
将来を見すえて学習したいものです。
限られた時間の中で全てを学習することは不可能です。
また、理解していないまま放っておいたことがいつまでも分からないままであったり、
一度学習したことをほとんどすぐ忘れていくことは日常茶飯事です。

そこで自分の理解度のチェック、頭の整理のために、学習目標を立ててみました。
最後の方はまだ自分の手に負える段階ではなく、途中までもダメダメかもしれません。

考えている学習プランの骨子:基礎医学臨床医学

・医学専門課程に入る前に、必要な物理学と化学を習得する。

基礎医学

1. 人体の構造と機能の体系的な理解(解剖・組織・生理・生化・発生など)

 ・細胞内レベルから個体レベルつまりミクロからマクロまで、それぞれのレベル
   における構造と機能の理解

   a. 細胞一般の構造と機能、細胞内小器官のはたらき、
      特に DNA 情報からのタンパク質合成、輸送、分泌の機構
      
        細胞とは何か?

   b. 人体に広く見られる細胞の種類、構造、機能、
      細胞の誕生から死までの歴史、細胞間相互作用、細胞間マトリックス

        細胞にはどんなものがあるか? 細胞はどこから来てどこへやって行くのか?
        細胞の外には何があるか? その構造は? 細胞と外との関係は?

   c. 各臓器特有の組織の構造と機能、各組織に特有の細胞の構造と機能

        組織が各細胞からどう組み立てられるか?
        組織内の各細胞のはたらきと組織全体のはたらきとの関係は?

   d. 各臓器の器官としての構造と機能

        その臓器の人体の解剖・機能における位置付けは何か?
        臓器内の組織にはどんなものがあるか?
        各組織のはたらきと臓器全体のはたらきとの関係は?

   e. 人体の各部位の構造と機能、各部位の生から死までの歴史

        ヒトの部品にはどのようなものがあるか? どうやって組み立てられているか?
        ヒトが生きて活動するのに、それぞれの部品がどうはたらくか?
        その部位にある臓器はどこから生まれて、どう変わって行くのか?

   f. 個体としての人体の構造と機能、個体としての生から死までの歴史
      ヒトにおける物質の合成、破壊。エネルギー獲得と消費。

        ヒトはどうやって生命を維持しているのか?
        どうやって活動しているのか?
        ヒトはどうやって生まれて成長し、老化して死んでいくのか?

 ・ミクロ-マクロ間の関係、細胞から個体までそれぞれのレベルでの働きが
   お互いにどういう関係があるか。

     ある機能は、どの微細構造の機能によって担われているか?
     個々の機能が統合されるとどういった全体の機能となるか?

 ・ミクロ、マクロそれぞれにおいて異なる部位間の相互作用

   特に情報伝達の仕組み、細胞内シグナリング、細胞間シグナリング、神経伝達、
   ホルモン、脳による制御

     細胞と細胞はどうやってお話(相互作用、情報交換)をするか?
     細胞に伝わった情報は細胞にどんな変化をもたらすか? またその機構は?
     器官やヒト個体への指令や調節はいかに行われるか?

 ・人体のホメオスタシス維持:栄養摂取、外来物の体内処理、エネルギー産生、
                             不要物排泄、体液の循環と保持、呼吸、代謝、
                             神経・ホルモンによる調節、高次中枢からの支配、
                             力学的な構造安定性・動的安定性

 ・ヒトの活動・行動とそれを支える人体との関係を考察する。

以上のような内容を、科学研究・発見の歴史、医療の歴史をふまえた上で、臨床との
関連などの問題意識を持って理解する。

正常状態・異常(疾患)状態それぞれにおける解剖・生理(病態生理)の違いを比較する
ことによって、正常状態の人体を理解する。

  どんな形か? 内部構造は? どこに存在するのか? その働きは?
  その形や働きがおかしくなるとどうなるか?

2. 疾患による人体の変化、薬物と人体(病理・薬理・内科など)

 ・各臓器もしくは全身における疾患の種類とその病態

   a. それぞれの疾患における症状と病態生理

        どんな臓器にどんな病気があるか? 病気になるとヒトはどうなるか?
        なぜその症状が出るのか?

   b. 疾患の病因と人体のミクロ、マクロレベルにおける形態・機能の変化

        なぜその病気が起きるのか? 
        疾患によってヒトの細胞、組織、臓器はどのように変化するか?

 ・生理活性物質と薬物の作用

   a. 生理活性物質の種類と分類

        人体内でどんな物質がはたらいているか?
        本来人体にない(天然 or 合成)物質が人体にどのような影響を及ぼすか?

   b. レセプターの種類・分類・存在場所

        レセプターとは? そのはたらきは? どこにあるか?
        レセプターファミリー、レセプタースーパーファミリーとは?

   c. 生理活性物質によるレセプターの変化、レセプターからのシグナリング、
      人体のミクロ・マクロにおける作用

        その物質がレセプターに結合するとどうなる? 細胞内での変化は?
        器官や全身にどういう影響を及ぼすか?

   d. 各疾患および正常状態における人体における薬物の作用、
      薬物の体内動態、相互作用、代謝、排泄

        薬はヒトの体のなかでどう処理され、どう循環し、どこでどう働き、
        最後はどう処分されるか?

   e. 疾患別の治療薬、作用機序、投与法、
      疾患の病態生理と薬物作用機序との関係、副作用

        どの病気にはどの薬? 薬はどうして効くのか? その機構は?
        副作用にはどんなものがあるか?

疾患の病態、病因の理解を中心とする。
なるべく臨床場面を意識し、自分が医師または患者であるとイメージして疾患を
理解する。
診断、治療のプロセスは先送り。

薬品の発見・開発の歴史、薬品の化学的性質を理解することは、薬物作用の理解
の助けとなる。

3. 人間の精神活動・発達(神経解剖・神経生理・神経薬理・行動科学など)

 ・脳神経系の解剖と生理

 ・感覚系と脳における情報処理、
   脳による人体の維持・運動の支配

 ・ヒトの精神活動に関する考察、正常および異常とは?
   精神疾患とされる状態のそれぞれの特徴を理解する。

 ・精神作用のある薬物の種類と作用機序、
   各精神疾患に対する治療薬とその作用

 ・精神の発達過程と幼少時の体験の将来への影響

 ・精神の身体への作用、心身症

 ・人間の本能、食欲・性欲・睡眠欲

 ・ヒトの活動・行動とそれを支える精神・心理・本能について考察する。

明確な因果関係の分からない分野であるが重要である。我流は泥沼にはまる
危険性あり。無理な理由付けよりも幅広い視点が必要である。

ヒトの人生経験の精神・身体への影響、異性への感情・欲望・理解、直接の
対人相手への感情と行動、こんなものが分かれば苦労しないが、他人を理解
するためには自分なりのビジョンを持ち行動する必要がある。

4. 感染症と免疫反応、免疫療法と化学療法(微生物、免疫、薬理など)

 ・病原性を持つ微生物の種類と生態

 ・感染経路、感染部位と病原性を発現する機序

 ・感染症の病態生理と症状

 ・免疫学の基礎と免疫疾患、人体の感染防御機構

 ・感染症に対する免疫療法

 ・感染症に対する薬物治療および薬物の作用機序

医療は当初、感染症との闘いであった。
敵(病原微生物)を知ることが先決。病原体の性質と感染後の病態との関係を
理解する。
現在は抗生物質の耐性菌に注意すべし。

免疫機構は難解… 用語に惑わされず本質を見極めよう。

5. 遺伝子、発生生物学、がん(遺伝、生化、病理、発生など)

 ・遺伝子は生物に関する情報の源であり、生命現象を司る。

 ・遺伝子が引き起こす先天性疾患、および後天性疾患のリスク

 ・発生の分子生物学的機構、胚操作、ノックアウトマウス

 ・がんは自己が自己の中に作り出した多彩な姿を持つ生命体である。
   がんは様々な組織型を持ち、転移してさらに増殖する。

 ・がんの本質は遺伝子変異

遺伝子は現代生物学の中心であり、今後の医学の発展は遺伝子研究にかかっている。
遺伝子や発生を操作するとき、生命倫理的側面を忘れてはならない。


臨床医学

1. 診断技術

 ・問診、診察

   a. 系統的なアプローチ

        患者の訴えは何か? 何を聞くべきか?
        患者の所見は? 何を見るべきか? 注意して観察すべき点は?

   b. 各医療場面における部分的な診察

        まず聞くべきこと、まず見るべきこと、まず調べるべきことは何か?

   c. コミュニケーション技法

        どのように患者と話すか? どうやって有用な情報を引き出すか?
        患者との信頼関係をどう築くか?

     → 診断の手がかりとなるものは何か?

 ・電気生理学的検査(ECG、EEG)、画像診断

   a. 測定・撮影技術の理解

        どんな機械か? 原理は? 何に用いるか?

   b. どの検査・画像をオーダーするか

        どんな情報が欲しいのか?
        その検査によってどんな情報が得られるのか?

   c. 検査結果の評価・読影術
      ECG、胸部・腹部・頭部・骨軟部の画像

      解剖の復習、各臓器の画像特性、正常像
      疾患別の病態と正常像からの変化との関係

        異常所見とは? 異常所見の示す意味は何か?

     → 診断の手がかりとなるものは何か?

 ・臨床検査

   a. 何を測定すべきか? 何を測定しているのか?
      何のために測定するのか?

   b. 検査値の異常と疾患の病態生理との関係

        正常値とは? 異常値の意味は?

     → 診断の手がかりとなるものは何か?

検査技術の開発・発展の歴史、当初の目的、現在における意味を知ることは
その検査の目的、検査値の意味を理解する助けになる。

2. 疾患の病態と検査、診断、治療

 ・各臓器および全身の疾患と症状、検査

   a. 疾患の症状と病態生理、診察への応用

        その病気の患者は何を訴えるか? どんな所見が見られるか?
        その病気が疑われる患者に何を聞くべきか?

   b. 各疾患の診断に必要な検査

        その病気では何を検査すべきか?

   c. 疾患の病態生理と検査異常値との関係

        その病気でどの検査値が異常になるか? その時の体の状態は?
        その検査値が異常になるのは体がどんな状態の時か?
        どんな病気がその状態を引き起こすか? 

   d. 疾患による ECG の変化、画像の異常

        疾患はどのような心電図変化として現れるか?
        病気による体の変化は? それが画像にどう現れるか?

 ・疾患の診断

     その病気の診断にとって必要な情報は何か?
     どんな情報からその病気の診断がつくか?

 ・疾患の治療

     その病気の重篤度は? 治療は可能か?
     どの程度まで治療できるか?

     治療の選択肢は? 各治療法の長所・短所は?
     その治療によって QOL は改善できるか?
     どんな基準で治療法を選択するか?

3. 診断のプロセス

 ・患者の観察、問診、身体所見から全ては始まる。

   a. 姿、態度、動きに何か変わったところはないか?

   b. 患者はなぜやってきたか? 不安に感じていることは全て話させたか?
      必要な情報は聞き出せたか? 聞き忘れたことはないか?

   c. 体系的かつ医学的知識に裏打ちされた診察・問診

      直観的な印象は重要、しかし決めつけは禁物

    → 可能性のある疾患は?

 ・どんな検査をオーダーするか

   a. 一般的な検査
 
   b. 特定疾患、特定臓器、特定機能を調べる特別な検査

    → 可能性のある疾患は?

 ・検査結果をどう評価するか

     患者はどういう状態にあると考えられるか?

    → 可能性のある疾患は?

 ・仮説を立てて検討する。なるべく広い可能性から絞り込む。

     系統的な鑑別診断、除外診断

 ・診断の確定

     ほぼ疑いのないものから仮説段階のものまで
     より重篤な可能性のあるものから、ほぼ問題ないものまで

      → 以下の治療方針に影響

内科医は腕の見せどころ。

日々の勉強、幅広い知識、把握力、論理的思考能力、コミュニケーション能力、
観察力、情報処理能力、直観力、反省能力、まあこれらは他の業種にも必要であるが。
自分の一度持った考えに固執しない。全ての情報は患者にある。

POS(Problem Oriented System)、POMR(Problem Oriented Medical Record) の導入


(以下、予定。臨床医への道のりは長いなあ)

4. 治療方針

 ・治療法の選択、併用、切替え

 ・POS(Problem Oriented System)、EBM(Evidence-based Medicine)

5. CURE と CARE

 ・治療とは何か? 治療によって何が可能になるのか?

 ・短期治療と長期治療

 ・患者にとって必要なことは何か?

病気とは? 病気の治癒とは? 病気との付きあい方は? QOL について。

6. 各専門科における疾患と医療

 ・内科、神経内科、皮膚科

 ・外科、脳外科、整形外科、泌尿器科

 ・産婦人科、小児科

 ・精神科

 ・耳鼻咽喉科、眼科

 ・放射線科、麻酔科

7. 医療現場での実際の仕事の理解と習熟

 ・医療現場、病院でのマナー

 ・医師の仕事とは?

 ・医療スタッフとの共同作業・協力

 ・手技、各種処置

 ・外来患者への対応、担当患者のケア、緊急時・救急患者の対処

 ・雑務

8. 医療における意志伝達と相互理解、コミュニケーションの重要性

 ・患者に接する態度、患者との信頼関係、インフォームドコンセント

 ・チーム医療における意志疎通、人間関係、リーダーシップ、
   スタッフからの情報収集・学習、スタッフへの指示・協力・理解・教育

 ・他の医師、他科、他病院との協力

9. 医療ミスの原因・対策・予防法

 ・初心者のミス

 ・慣れから来るミス

10. さらに新しい医療の研究へ、現在までの医療の見直し

     → 基礎医学研究との協力

11. 医療経済、法律、社会との関わり

12. 人類社会・文化における医学・医療、医療倫理


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